広告メール送信時の法的留意点(特定電子メール法、特定商取引法、個人情報保護法)

企業法務一般
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広告メールを送信するとき、どのような法規制があるか正確に理解していますか?
主には、特定電子メール法、特定商取引法、個人情報保護法、の3法に気を付ける必要があります。本稿では、これらの規制内容についてわかりやすく解説します。

特定電子メール法

特定電子メール法の規制の概要は以下の通りです。

規制の趣旨

携帯電話からのインターネット接続の普及に伴い、電子メールによる一方的な広告宣伝メールを送りつける「迷惑メール」が社会問題化したため、これに対応することが規制の趣旨になります。

規制対象

「自己又は他人の営業につき広告宣伝を行うための手段として送信をする電子メール」が規制対象です(特定電子メール法2条2号)。

このようなメールは、予め送信に同意する旨を通知した者に対してしか、原則として送信することができません(特定電子メール法3条1項1号)。

例外

上記の原則に対して、同意なくとも送信できる例外として、以下が存在します。

  1. 取引関係にある者に送信する場合
  2. 名刺などの書面により自己の電子メールアドレスを通知した者に対して送信する場合
  3. 自己の電子メールアドレスを通知した者に対して、以下の広告宣伝メールを送信する場合
    ▶同意の確認をするための電子メール
    ▶契約や取引の履行に関する事項を通知する電子メールであって、付随的に広告宣伝が行われているもの
    ▶フリーメールサービスを用いた電子メールであって、付随的に広告宣伝が行われているもの
  4. 自己の電子メールアドレスをインターネットで公表している者(個人の場合は、営業を営む場合の個人に限る)に送信する場合

特定商取引法

特定商取引法の広告メール規制の概要は以下の通りです。
特定電子メール法との違いを意識して見ていくことにします。

規制の趣旨

通信販売をする販売業者等による広告メールにより、消費者に開封・廃棄等に時間を浪費させられたり、広告メールを見て取引に入った消費者がトラブルに巻き込まれることの防止が規制の趣旨になります。特定電子メール法の規制趣旨に近いですが、消費者被害防止が特定商取引法の最大の目的であることもあって、通信販売における消費者被害の防止も規制趣旨に含まれてきます。

規制対象

通信販売をする場合の商品等の提供条件について行う広告メールが規制対象です(特定商取引法12条の3第1項)。特定電子メール法と異なり、「通信販売をする場合の」メールに限定されます。

このようなメールは、受信者の承諾を得ないで送信することは原則として禁止されます(特定商取引法12条の3第1項)。

例外

上記の原則に対して、同意なくとも送信できる例外として、以下が存在します。

  1. 相手方の請求に基づき、電子メール広告をするとき
  2. 契約の内容又は契約の履行に関する事項を通知する場合に、当該電子メールの一部に付随的に広告を掲載する場合
  3. 相手方からの請求に基づいて、又はその承諾を得て送信する電子メールの一部に広告を掲載する場合
  4. 送信される電子メールの一部に広告を掲載することを条件として、電子メールアドレスをを使用させる等のサービス(フリーメールやメーリングリスト)を利用して電子メール広告を提供する場合

注意点

最近のサービスは、大体ウェブで申し込みできることが多いですから、特定商取引法でいう「通信販売」に当たります。そのため、特定電子メール法と特定商取引法の適用を同時に受けることが多いと思われます。
ここで、特に注意すべき点は、特定電子メール法では取引関係にある者に対する広告メール送信は同意なく可能とされている一方、特定商取引法では、このような例外はないことです。つまり、自社サービスの契約者に広告メールを送信することは、特定電子メール法上は適法ですが、特定商取引法上は、(例外に当たらない限り)同意を得ていない限りは違法なのです。そこで、いずれの法律の適用も受ける場合には、契約時に、明確に広告メール送信の同意を取得しておく必要があります。

なお、両法には、具体的な同意の取得方法や、同意を得た記録の保存義務など、他にも気を付けなければならない規制が定められていますので、一度、広告方法の適法性を全般的に確認した方が良いでしょう。

個人情報保護法

個人情報取扱事業者は、個人情報の利用目的をできる限り特定しなければならず(個人情報保護法15条1項)、また、本人の同意なく利用目的を超えた利用をしてはなりません(個人情報保護法16条1項)。そして、特定した利用目的は、予め公表するか、本人に対し通知しなければなりません(個人情報保護法18橋1項)。

広告メール送信との関係では、メールアドレスの利用目的として、広告目的でのメール送信を利用することについて、プライバシーポリシーなどに明確に記載しているかを確認する必要があります。

 

 

本記事に関する留意事項
本記事は掲載日現在の法令、判例、実務等を前提に、一般的な情報を掲載するのみであり、その性質上、個別の事案に対応するものではありません。個別の事案に適用するためには、本記事の記載のみに依拠して意思決定されることなく、具体的事案をもとに適切な専門家にご相談ください。

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