個人情報とは何かー特定のデータを個人情報として扱わなくて済む方法

個人情報
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容易照合性

個人情報の定義解説の2回目です。これを理解すれば、個人情報の利活用のヒントになるかもしれません。
前回の解説はこちら。
https://techlawlab.biz/what-is-personal-information/

さて、容易照合性とは、個人情報の定義のうち、以下の部分です。

「(他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)」

ここで重要なのは、容易に照合することができる、の部分です。
この点については、「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン (通則編)」1https://www.ppc.go.jp/files/pdf/guidelines01.pdf6pでは、以下のとおり解説されています。

「他の情報と容易に照合することができ」るとは、事業者の実態に即して個々の事例ごとに判断されるべきであるが、通常の業務における一般的な方法で、他の情報と容易に照合することができる状態をいい、例えば、他の事業者への照会を要する 場合等であって照合が困難な状態は、一般に、容易に照合することができない状態であると解される。

さらに、「『個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン』及び『個人データの漏えい等の事案が発生した場合等の対応について』に関するQ&A」2https://www.ppc.go.jp/files/pdf/180720_APPI_QA.pdfでは、この点について以下の重要な記載がされています。

(個人情報)
Q1-15 事業者の各取扱部門が独自に取得した個人情報を取扱部門ごとに設置されてい るデータベースにそれぞれ別々に保管している場合において、ある取扱部門のデータ ベースと他の取扱部門のデータベースの双方を取り扱うことができないときには、「容易に照合することができ」(法第2条第1項)ないといえますか。
A1-15 事業者の各取扱部門が独自に取得した個人情報を取扱部門ごとに設置されている データベースにそれぞれ別々に保管している場合において、双方の取扱部門やこれらを 統括すべき立場の者等が、規程上・運用上、双方のデータベースを取り扱うことが厳格に禁止されていて、特別の費用や手間をかけることなく、通常の業務における一般的な方法で双方のデータベース上の情報を照合することができない状態である場合は、「容易に照合することができ」ない状態であると考えられます。一方、双方の取扱部門の間で、通常の業務における一般的な方法で双方のデータベー ス上の情報を照合することができる状態である場合は、「容易に照合することができ」る 状態であると考えられます。

特定のデータを個人情報として扱わなくて済む方法

以上を前提にすれば、例えば、氏名と電話番号を取得する場合において、このうちの電話番号を個人情報として扱わなくて済む以下のような方法が思い付くはずです。

①氏名と電話番号を別々のサーバーに保存する。
②双方のサーバーを統括すべき立場の者を別々に置き、規程上・運用上、双方のデータベースを取り扱うことを厳格に禁止して、特別の費用や手間をかけることなく、通常の業務における一般的な方法で双方のデータベース上の情報を照合することができない状態にする。

ただし、同時に、電話番号では、このような方法は非現実的であることが分かるでしょう。
なぜなら、特定の顧客にリーチしたい等の目的があって電話番号を取得するのでしょうから、氏名とセットで把握して始めて意味があるのであり、電話番号を単体で保有しても意味がないからです。

しかし、電話番号ではなく、広告IDや位置情報などではどうでしょうか。
DMPでの活用等の場面では、必ずしも氏名とセットで把握する必要はない場合もあるでしょう。
このように、情報によっては、個人情報として扱わなくて済む可能性があるのです。

以上、今回は、容易照合性の観点から解説しました。
しかしながら、氏名と電話番号を同時に取得し、その後にサーバーを分けるのでは意味がないこと(取得の時点で電話番号も個人情報になるため)、容易に照合できない状態を社内で作るにしても、社内体制作りや規程作り等を慎重に検討すべきこと、その他諸々の注意はありますので、安易にこのような取り扱いを導入するのは避け、専門家に相談することをおすすめします。

 

 

本記事に関する留意事項
本記事は掲載日現在の法令、判例、実務等を前提に、皆様への情報提供として一般的な情報を掲載するのみであり、その性質上、特定の個人や団体に具体的に適用される個別の事情に対応するものではありません。個別の事案に適用するためには、本記事の記載のみに依拠して意思決定されることなく、適用に関する具体的事案をもとに適切な専門家にご相談ください。

  • 1
    https://www.ppc.go.jp/files/pdf/guidelines01.pdf
  • 2
    https://www.ppc.go.jp/files/pdf/180720_APPI_QA.pdf
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