外注・業務委託契約で後から揉めないために、発注前に決めておく6つのポイント

発注者と受託者を結ぶ橋の中央に条件ゲートがあり、受託者側から再委託先のノードが下方向に伸びる抽象図 契約書
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開発の一部を外部の会社に任せる、デザインやコンテンツ制作を個人のフリーランスに発注する、バックオフィス業務をまとめて委託する。事業のスピードを上げようとすると、外注・業務委託は避けて通れません。ところが、実際にトラブルになるのは「仕事の中身」ではなく「契約の決め方」であることが多いです。仕様が固まらないまま作業が進む、納品物の権利が誰のものか曖昧なまま公開してしまう、支払時期でもめる。こうした問題の多くは、発注前の契約設計で予防できます。

この記事では、外注・業務委託契約で後から揉めやすいポイントを、実務で確認しておきたい順に整理します。

契約類型を「請負」か「準委任」かで曖昧にしない

業務委託契約と呼んでいても、法律上は「請負」と「準委任」で扱いが大きく変わります。請負は仕事の完成に対して報酬を払う類型で、民法632条は「請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる」と定めています。成果物が想定どおりでなければ、原則として発注者は追完や報酬減額を求められます。一方、準委任は業務の遂行そのものに対して報酬を払う類型で、成果の完成までは保証されません。

問題になりやすいのは、契約書のタイトルだけ「業務委託契約」として、成果物責任やレビュー体制をどちらの前提で組むか決めていないケースです。次の点を先に整理しておく必要があります。

  • 報酬は「成果物の完成・納品」に対して払うのか、「稼働・工数」に対して払うのか
  • 受託者が負う義務は「完成させること」か「善良な管理者の注意をもって遂行すること」か
  • 指揮命令をしていないか。作業者に直接業務指示を出すと、偽装請負や労働者派遣法の問題が生じ得る

仕様と検収の基準を先に固める

「思っていたものと違う」という争いは、仕様書と検収条件が曖昧なまま作業に入ることから生まれます。あらかじめ、(1)成果物の範囲と仕様をどの文書で確定するか、(2)検収期間は何日か、(3)検収で不合格になったときの修正回数と費用負担、(4)期間内に発注者が合否を通知しなかった場合の扱い、を契約に落とし込んでおくとよいでしょう。

契約不適合(従来の「瑕疵」)については、民法637条により、発注者が不適合を知った時から1年以内に通知しないと、追完請求や報酬減額などができなくなります。ソフトウェアのように不具合が後から判明しやすいものは、この期間を契約でどう設定するか、検収との関係を含めて確認しておく必要があります。

成果物の権利帰属は「特掲」まで踏み込む

制作物や開発物の著作権は、契約で明確に定めない限り、作った側(受託者)に残ります。ここで見落とされやすいのが、著作権法61条2項です。同項は「著作権を譲渡する契約において、第二十七条又は第二十八条に規定する権利が譲渡の目的として特掲されていないときは、これらの権利は、譲渡した者に留保されたものと推定する」と定めています。翻案権(27条)と二次的著作物に関する原著作者の権利(28条)は、契約書に「第27条および第28条の権利を含む」と明記しておかないと、譲渡されなかったものと推定されてしまいます。

実務では、次の3点をセットで確認します。

  1. 著作権を譲渡するのか、利用許諾にとどめるのか。譲渡する場合は27条・28条の権利を特掲する
  2. 著作者人格権について、受託者が発注者に対して行使しないことを定める
  3. 受託者が既存で保有する汎用モジュールや第三者の素材(OSS等)の扱いを切り分ける

再委託のルールと情報管理

受託者がさらに別の会社や個人へ作業を回す再委託は、品質と情報管理の両面でリスクがあります。全面的に禁止すると現実的でないことも多いため、「発注者の事前の書面による承諾を要する」「再委託先にも同等の秘密保持義務・個人情報保護義務を課す」「再委託先の行為について受託者が責任を負う」という形で管理するのが一般的です。個人データの取扱いを伴う場合は、個人情報保護法上の委託先監督の観点からも、再委託の把握は欠かせません。

報酬・支払期日と、フリーランス・下請の規制

発注先が個人事業主や一人会社の場合、2024年11月1日に施行された「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(フリーランス・事業者間取引適正化等法)の対象になります。同法3条は給付の内容・報酬額・支払期日などの明示を義務づけ、同法4条は報酬の支払期日を「給付を受領した日から起算して六十日の期間内において、かつ、できる限り短い期間内」に定めるよう求めています。受領拒否や不当な報酬減額、著しく低い報酬額の設定なども禁止行為として並びます(同法5条)。

また、資本金の要件などを満たす取引は、2026年1月1日施行の改正で「下請代金支払遅延等防止法」から名称変更された「中小受託取引適正化法」(取適法)の適用を受けます。自社の外注が下請規制やフリーランス保護法の対象になるかを整理し、発注書面のフォーマットと支払サイトを見直しておくとよいでしょう。

中途解約したときの清算ルール

プロジェクトが途中で中止になる場合の清算も、あらかじめ決めておくべき項目です。請負では、民法641条により「請負人が仕事を完成しない間は、注文者は、いつでも損害を賠償して契約の解除をすることができる」とされ、発注者は完成前ならいつでも解除できますが、損害賠償が必要になります。既にされた作業のうち可分な部分で発注者が利益を受けるときは、その割合に応じた報酬請求が認められます(民法634条)。準委任でも、履行の中途で終了したときは既履行割合に応じた報酬請求ができます(民法648条3項)。

契約では、中途解約時に「どの時点までの成果物・仕掛品を引き渡すか」「未検収分の報酬をどう算定するか」「解約に伴う実費や損害の範囲」を定めておくと、解約時の交渉が整理しやすくなります。

まとめ

外注・業務委託のトラブルは、契約類型・検収基準・権利帰属・再委託・支払条件・中途解約という6つの論点を発注前に詰めておくことで、その多くを予防できます。特に成果物の権利帰属と支払条件は、後から修正しにくく影響も大きい部分です。定型の業務委託契約書を使っている場合でも、自社の発注実態に合っているか、一度確認しておくことをおすすめします。

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の法律問題についての法的助言を構成するものではありません。個別の事案については、弁護士にご相談ください。

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